四月詐欺・後 続き。推理なんてあってないようなものです。 『ん……』 『んん……』 「……」 僕今日の寝起き、こんな声出してたんだ……恥ずかしいな……。 『あれ?』 『おはよう、シンジ君』 『わっ、ちょっ、何してんの、カヲル君!』 『いやぁ、可愛いシンジ君を見ていたら我慢出来なくなっちゃってね』 『我慢出来なくなくなっちゃってね、じゃないよ! もう起きるから!』 『残念だね』 ちょっとの間。 何だか嫌な予感がする。 『どうしたんだい?』 『え、いや、何でもないよ!?』 『もしかしてさっきので勃っちゃった?』 『や……』 『ちょっと触っただけなのにシンジ君はエッチだね』 『や……その……』 『僕が抜いてあげるから』 「カヲル君……? 僕達がその、ヤってる間も録って……?」 「当然だよ。今日一日の音は全て録ってあるよ」 聴かないといけないのか……。 恥ずかしい。 『だるぅ……』 僕の気持ちは数時間前の僕の気持ちとシンクロした。 まぁ、今回は精神が擦り減ったという意味で、だけど。 「お疲れ、シンジ君。聴いてる時のシンジ君、なかなか可愛かったよ。でもこのヤってる最中に嘘はないから安心して」 「そっか、良かった……って、えぇっ!? それを早く言ってよ!」 どっと疲れた。 大体カヲル君の今日の台詞は抜き出せた。 ルール関連には嘘がないから省いたとしても、結構多い。 でも、『おはよう、シンジ君』に嘘があるとは思えないし、そういうのを消していけば……! 怪しいのはどれだろう? 『普通にお願いしたらシンジ君が断るようなことを頼むつもりだから』 お願いが実は僕が嫌がることじゃないとか。 いや、そんな楽観的でいいわけない。 むしろ『恥ずかしいのは最初だけ』ってのが嘘なんじゃ……。 恥ずかしいのが最初だけで済むわけない。 怪しいのはお願いに関することくらいかなぁ。 あとは『黙ってしまうのは寂しい』が寂しくなかったとか? もともと邪魔する目的だから寂しくなんかないとか……いやもしそれが嘘だったら地味にショックを受けそうだなぁ。 疑いだしたらキリがないな……。 うーん。 ふと目が覚めた。 え? もしかして僕寝てた……? ……しまった! 寝ちゃってた!! そりゃあ朝っぱらから激しい運動をして眠気がきてたのにも関わらず頑張って起きたから……。 「おはよう、シンジ君。もう夜だよ」 「え、嘘!? ご飯作らなきゃ!」 食事と風呂で一日の残り少ない時間をほぼ使いきってしまった。 長いようで短かった今日が終わる。 仕方ない、自信はないけど一か八かだ。 ここまできたら答えるしかない。 答えなければ当たるものも当たらない。 「さあ、シンジ君。僕の嘘見抜けたかい?」 「自信はないんだけど……カヲル君のお願いってさ、恥ずかしいのは最初だけじゃないんじゃないかと……思うんだけど……」 「なるほど、それがシンジ君の思う嘘なんだね?」 「うん……」 「僕はちゃんと恥ずかしいのは最初だけのつもりでいるよ」 「ってことは……」 間違い? 「ち、違うならどれが嘘なのさ?」 「シンジ君を見ていたら我慢出来なくなっちゃってね、ってところさ」 「えぇっ!?」 「僕は初めから襲うつもりだったからね」 「そんなの……!」 「ずるいとは言わない約束だろう?」 「……」 ずるい。 心の中で叫ぶ。 そうだ、カヲル君のあの自信。 普通に考えたところでわかるはずないんだ! 「さて、僕の言うことを聞いてもらうよ。大丈夫、恥ずかしいのは最初だけだから」 四月馬鹿、か。 騙された僕が馬鹿なんじゃない、このゲームに乗った僕が馬鹿だったんだ。 僕は過去の僕に対して溜め息をついた。 終 ------------------------- ごめんよ、シンジ君。そういう運命だったのだ……。 H23.7.19 戻る [*前へ][次へ#] |